この記事は「救急医療の危機とは?」における要点整理記事です。
完全版は、以下の記事に集約しています。
執筆者:現役消防職員(消防隊長歴任)|非常時の経験を日常に活かす防災知識を発信中
前回は、心停止からの蘇生の実態についてお伝えしました。
今回は引き続き、心停止原因別の救命に関する考察とAEDについてお伝えします。
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みなさんも理科の授業で学んだ覚えがあるかもしれません。
心臓の筋肉(心筋)はいわゆる他の筋肉(骨格筋)と異なる性質があります。
例えば、連続運動を行っても疲労により機能が低下しない、意図的に動かすことができない、などの特徴を持っています。
これは「疲れたから」と心筋が機能を停止してしまうと直ちに命の危機につながるため、順当な進化の結果と言えます。
しかし、それでも心臓が停止に至る原因は何なのか。 次のデータから実態を読み解きたいと思います。

この図は、原因別(推定)の心停止による救急搬送人数です。大きく心原性(=心臓に原因がある)とそれ以外の原因に分けられています。
この中で割合の大きい「除外診断心原性」とは、老衰や原因が特定できない心停止を指しています。
「その他の内因性」は、呼吸器系や消化器系の疾患によるものを指しています。
併せて次の図もご覧ください。

こちらは原因別の心拍再開率です。
まず前提として、この統計における心停止に至った事例のうち3/4程度 (77.2%)は65歳以上の高齢者です。
そのため、不慮の事故に比べて疾病に起因するケースが多くを占めています。
それでは、この資料から読み取れることをいくつか解説します。
原因別の救命率の高さでは「脳血管障害」「心原性確定」「アナフィラキシー」「窒息」の順となっています。
「脳血管障害」「心原性確定」の救命率の高さには、前回触れた高い目撃率が貢献していると考えられます。
特に原因が心原性と確定する経緯には、AEDの使用が大きく関わっていますので、次回の記事で改めてご説明したいと思います。
「アナフィラキシー」は食物や蜂毒によるアレルギー反応で知られますが、心停止に至る件数が年間4件と少ないことがわかります。
「窒息」は食物を喉に詰まらせるなどにより発生しますが、窒息に至る原因(食物など)を除去できれば、劇的に症状が改善することがわかっています。
最後に参考として「悪性腫瘍」を下回って最も救命率が低い「溺水」について触れます。
溺水は河川などで溺れるケースもありますが、実は自宅の浴室で発生する事故が多数を占めます。
下の表から「水難事故」の年齢別搬送人員を確認すると、78.0%が65歳以上の高齢者で、事故の66.8%は自宅で発生しています。
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そして前述の資料から、他の要因と比べて目撃率が極めて低いことがわかります。
なお、浴室で溺れて一晩中発見されなかったようなケースは、病院へ搬送されず、統計には計上されないため、潜在的に溺水の致死率はさらに高いと考えられます。


※「溺水」=「水難事故」ではないため件数は一致しない。
全体を通して見ると、心停止からの心拍再開率は10.5%と極めて険しい道だと言えます。
次回は、その中に差し込む光明である「AED」についてお伝えします。
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