執筆者:現役消防職員(消防隊長・人事マネージャー歴任)|非常時の経験を日常に活かす防災知識を発信中
目の前で誰かが倒れたとき、あなたは動けますか?「知識はあっても自信がない」という心理的障壁が、救えるはずの命を左右しています。消防の現場データから見る応急手当の実態と、一歩踏み出すためのマインドセットを伝えます。
【救命の心理】応急手当ができない3つの理由|「自信がない」を乗り越える消防の視点
【消防の現場視点で、まず結論をお伝えします】
救急現場に立ち会う私たちから見て、最悪な選択は、何もしないことです。心停止状態の人に対し、完璧な手技を求めて躊躇する必要はありません。未処置のままであれば、その方の救命率はゼロです。たとえ手技が不格好でも、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始し、AEDを確保しようとするその勇気こそが、救急隊が到着するまでの唯一のバトンとなります。責任や失敗への不安を抱くのは当然ですが、その場に居合わせたあなたこそが、その方にとっての最初の、そして最大の希望なのです。
「救急医療の危機①~時間との闘い~」で応急手当の重要性について触れました。
raisethestandard.hatenablog.jp
しかし応急手当に関する調査では、少し心配な結果が表面化しています。
1. 調査が明かす「応急手当」のリアルな実施意識

「周りの人が倒れた時、応急手当ができますか?」との問いに、
①方法を知っているから、実施できる
②方法を知っているが、実施できない
③方法を知らないので、実施できない
の3つの答えに、ほぼ1/3ずつ均等に回答がありました。
2. 「知っているのにできない」背後にある不安の正体
この中で、「②方法を知っているが、実施できない」の理由には、自信がない、悪化が心配、誤った処置の責任といった答えが寄せられました。
このような事態に遭遇することは一生に一度あるかないかの出来事です。
生死をさまよう方に対して自分がうろ覚えの手法を実践できるか不安だという気持ちもよく理解できます。
3. 救命率を左右するのは「最初の数分」という事実
しかし、心停止に陥っていた場合、誰も処置を行わなければその方の致死率は100%です。
その場に居合わせた方の行動が早ければ早いほど救命率が高まることは「救急医療の危機②~心停止の実態~」に示したデータからも明らかになっています。
raisethestandard.hatenablog.jp
胸を押す、AEDを運ぶ。非常時に向けた心構えをして、勇気を持って取組みましょう!
次回は引き続き応急手当によって生じる責任について解説します。
raisethestandard.hatenablog.jp
【まとめ】
行動できないという葛藤は、多くの人が抱える自然な反応です。しかし、命の現場において「完璧」よりも価値があるのは「速やかな開始」です。失敗や責任への不安を解消するためには、まず「何もしなければ失われる命がある」という現実を直視し、自分にできる最小限の行動(胸骨圧迫やAEDの依頼)に集中することが重要です。あなたのその一歩が、誰かの未来を繋ぎ止める最大の力になります。
現場の最前線で培った「命を守る知恵」を、日常に活かせる形でお伝えしています。
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