一つ先の標準 〜未来を少しよい方に〜

【講演ボランティア・現役消防】危機管理・防災・パフォーマンス向上など

巨大地震とその前後に起きる地震~後発地震注意情報~

巨大地震が発生すると、その前後には規模の異なる地震が連続して発生することがあります。

本記事では、東日本大震災の直前に起きた地震熊本地震の二度の大きな揺れ、そして現在運用されている後発地震注意情報に触れながら、この現象を整理します。


2011年3月9日三陸沖でM7.3の地震が発生しました。これは東日本大震災(M9.0)の2日前であり、多くの専門家が注目した事例です。

 

この揺れは結果的に「本震の前に起きた大規模な前震」であると位置づけられました。

前震は、本震が発生してはじめて「前震だった」と判断されるので、この時点で余震への警戒はされていてもまさかM9規模の本震が控えていると身構えた人はそういなかったでしょう。


ただ、大きな地震が起きた直後は、より大きな本震が続く可能性があるという事実は、地震学上よく知られています。

目の前の地震最初の揺れであっても最大の揺れとは限らないことは知識として知っておくべきことです。


2016年の熊本地震では、4月14日にM6.5の強い地震が起き、このケースでも多くの人がこれを本震と認識しました。

しかし、28時間後の4月16日、さらに大きなM7.3の揺れが発生しました。

 

熊本城の被害に象徴されるように、二度にわたる揺れが広い地域に大きな傷跡を残しました。

今ではこのケースが前震→本震の典型例としてしばしば紹介されます。

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そして、政府が2022年から運用を開始している後発地震注意情報について触れていきます。

これは、ある地域で大きな地震が発生した直後、「さらに大きな地震が起こる可能性が普段より高まっている」と判断された場合に発表される情報です。

確率を示しつつ、その間にとるべき行動を呼びかけるという建付けになっています。

内閣府より

 

この情報が発表された場合には必ず大地震が起きるというものではありませんが、普段より注意が必要というメッセージになります。

大きな地震が起きた後の数日間は倒れやすい家具から離れて休む、避難準備品を整えるなど、リスクに応じた行動をとることが望ましいとされています。

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このように、巨大地震の前後には、大小さまざまな地震が連続して起きることがあります。

東日本大震災前のM7.3、熊本地震の二度の激震など、過去の大地震からは大きな揺れは一度とは限らないという教訓が示されました。


地震の発生日時を予測することはできませんが、大きな地震の後は警戒を強めるという原則のもと、命を守るための行動について考えていきましょう。

 

【用語】ルーティン

 本番で力を発揮するための「ルーティン」の解説。

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【ルーティン】

~本番での冷静さを保つために、自分なりの決まった手順や行動を繰り返すこと。

日常の中で行う動作をルーティン化することで、本番での安定したパフォーマンスにつながる。

例えば、準備を決まった手順で行ったり、チェックを毎回同じ流れで確認したりすることで、緊張や焦りに左右されにくくなる。

普段通りの行動が心を落ち着けるスイッチとしての役割を果たす。

試験や面接、プレゼンの場面では、本番直前に深呼吸をする、机の上を整える、あるいは冒頭の一言を必ず声に出して練習するといった行動を習慣化し、冷静さを呼び戻す仕組みを構造的に準備することが力を発揮する助けになる。~



【解説】

ルーティンをつくる際のポイントは、①短時間でできること、②本番の環境で再現しやすいこと、③自分に合った方法であること、の三つです。

スポーツや競技のスタート前に肩を軽く回したり小さく数回ジャンプする。

試験なら「開始前にシャープペンを一度回す」といった些細な動作でも十分効果があります。

(個人的には息を吸う、吐くをルーティンに絡めると心身にバランスよくスイッチを入れる方法として効果的に感じます。)


冷静さは一朝一夕で身につくものではありませんが、手軽な対処法として取り入れるハードルが低いのがルーティンの良いところです。

日常の訓練や学習の中から、自分だけのルーティンを育てていきましょう。

 

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燃焼の三要素~発火と消火の基本~

前回の記事では、なぜ水が消火に用いられるのかについて簡単に触れました。

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火災を防ぎ消火するためには、火がどのような条件で発生し拡大するのかを理解することが欠かせません。

燃焼の三要素はその基本となる知識です。

これは、可燃物・酸素供給源・熱源の3つが揃うことで火が起こるという原理です。ひとつでも欠ければ、燃焼は成立しません。


まず1つ目は可燃物です。

これは燃える対象となるもので、木材や紙、ガソリン、プラスチックなどが代表的です。

建物内では、家具やカーテン、衣類なども立派な可燃物になります。

(不特定の人が出入りする空間では、延焼を防ぐためにカーテンやじゅうたんなどに防炎製品を使用するよう定められています。)

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最近ではリチウムイオン電池など、見た目には燃えにくそうなものでも、条件がそろうと激しく燃焼するケースがあります。

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2つ目は酸素供給源です。

燃焼を維持するには酸素が必要で、通常は空気中の酸素がその役割を担います。

酸素がなければ、いくら燃えやすい物質と高温があっても火はつきません。

火災現場で火勢が一時的に弱まっても、ドアや窓を開けた途端に再び燃え広がるバックドラフト現象も、酸素の急激な供給が原因です。

 

消防隊の活動では煙を逃がすために窓を開けたいところですが、火種が酸素を求めて燻っているような状態の時に窓を開けると爆発的延焼を助長してしまうので細心の注意が必要です。


3つ目は熱源です。

これは着火のきっかけとなるエネルギーで、ライターやマッチの火花だけでなく、電気機器のショート、静電気、電熱なども該当します。

珍しいところでは太陽光がレンズ効果で収斂して発火することもあります。

(虫眼鏡で黒い紙を焦がす実験の原理です。)

京都市消防局より


このように、生活の中にある様々なエネルギーが火災の引き金となり得ます。

 

以上、三要素のいずれかを取り除くことで、燃焼を防ぐことができます。

 

たとえば消火器は、粉末や二酸化炭素で酸素を遮断することで消火します。

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水をかけるのは、熱源を奪って温度を下げるためです。

燃料タンクのコックを閉めて可燃物を断つのも同じ理屈です。


消防の現場では、この燃焼の三要素を意識して活動します。

現代の消防戦術の基本は水をかけることですが、さらに有効な手段がないのか、逆に事情があって水をかけられない場面もあるので最適な消火手段の判断が求められます。

 

消火用水の確保~消火栓・防火水槽etc.~

消防隊の活動に欠かせないものの一つが水です。

私が幼いころには、あの大きな消防車の中には水がたくさん詰まっていると思っていました、がその実態は――


理科の授業で燃焼の三要素について教わったことを覚えていますか?

燃焼には可燃物・酸素・熱源の三要素(とその継続)が必要です。

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つまり燃焼を止める(消火する)ためには、この要素のいずれかを取り除くことになります。

 

水は世の中にありふれており入手が容易・安価であることから、最も一般的な消火手段として用いられています。

そして水は比熱が大きく(温度が変わりにくく)蒸発熱が大きいため、炎から多くの熱エネルギーを奪うことができます。

そこで現在では消火手段といえば放水を指すのが一般的となりました。


そこで消防隊にとってはこの消火用水を手に入れることが消防活動の大前提です。

ここで水を確保するために考えられる手段がいくつかあります。

東京消防庁より

 

一番スタンダードなのは消火栓です。

消火栓は上水道管の途中に設けられる消防隊用の取水口のようなものです。

地中のマンホール下に設置されるものと地上に立管として飛び出しているものに大別されます。

美祢市より


そのほかにも公園やマンションなどの敷地の地下には防火水槽と呼ばれる設備が埋設されているところがあります。

その名のとおり消火のために水を貯めておく水槽のことを言い、40㎡や100㎡の容量であることが一般的です。

消火栓が圧力をかけて送水されているのに対して防火水槽は自然状態の水が地下空間にあるだけなので、消火に活用するためにはポンプ車などのポンプ装置で吸い上げる必要があります。

 

そして、その他にもプールなどにある水も消火の選択肢になります。

これらは防火水槽のように取水を前提としていないので車両の接近が難しい場合がある一方で、容量が大きい又は事実上無限にあるために大量の水が必要な現場では重宝されます。

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そして冒頭で触れた消防車の話題――水を積んでいるという車もあるという点では半分正解ですが、タンク付きの車でも一般的には1t程度の水量です。

(容量は車種によって異なります。)

この水は3分程度の放水で尽きてしまいますが、水を吸い上げる又は他の車に送ってもらうまでの初期の活動で大きな効果を発揮します。

 

ただし全ての消防車がタンクを持つわけではなく、タンクがある車でもその大部分はポンプ装置や現場活動で使用する様々な機材が占めています。

ですので、消防隊の活動には早く確実な消火用水の確保が非常に重要だとおわかりになっていただけると思います。

 

次回は冒頭の話題、燃焼の三要素のおさらいです。

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【事例】1783年天明大噴火

火山噴火の脅威で触れた事例、1783年浅間山噴火(天明大噴火)についての解説。

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~~~
江戸時代中期、1783年(天明3年)に発生した浅間山の大噴火は、日本史上最大級の火山災害のひとつ。

浅間山は現在の群馬県と長野県の県境に位置する活火山であり、この噴火は規模、被害ともに甚大で、人々の暮らしや社会秩序を大きく動揺させた。

国土交通省関東地方整備局より


噴火活動は6月から断続的に始まり、7月8日に最大の爆発を迎えた。

火砕流や土石なだれが山麓を襲い、嬬恋村の鎌原地区は壊滅した。

村落は一瞬にして埋没し、この災害で約1,500名が死亡したと伝えられる。

国土交通省関東地方整備局より



被害は直接の火山現象にとどまらず、大量の火山灰が降り注いだことで農地は壊滅状態となった。

加えて気候変動が重なり、全国的な冷害を引き起こした。

これがかの天明の大飢饉」の主因の一つで、数十万人規模の餓死者が生じさせた。

(当時の国内人口は現代の1/5の2,600万人程度と考えられる。)


江戸幕府は飢饉対策に苦慮したが、米価の調整や救済策は十分に機能せず、庶民の困窮は深刻化した。

結果として幕府への不信は高まり、社会不安を助長することとなった。

自然災害が政治体制に影響を及ぼすことを示した事例とも捉えられる。


この災害の被害は日本列島にとどまらず、地球規模の気候変動をもたらした。

大量に放出された火山灰が成層圏に到達し、太陽光を遮断・反射する傘のような役割を果たし、北半球を中心に地球の気温を低下させるなどの影響が見られた。

 

これが同年に発生したアイスランドラキ火山の大規模噴火と合わせて、1783年から翌年にかけて北半球の広い地域で異常気象が観測された原因であると考えられる。

 

例えばイギリスやフランスで冷夏となり、農作物が不作となっている。

特にフランスでは穀物価格が高騰し、やがてフランス革命へとつながる背景の一因となった可能性があるとも言われる。

 

【資料】想定外からのリカバリー

本番で力を発揮する」シリーズでは実力を発揮する方法について検討してきました。

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とはいえ、大きな舞台になればなるほど、小さな失敗想定外の思わぬハプニングが起こったりするものです。

 

その瞬間に固まってしまえば、事態はさらに悪化します。

逆に即座に切り替え、次の一手を打てる人は「本番に強い人」としてむしろ評価を高めるチャンスにもなり得ます。


リカバリー思考の第一歩は、ミスやハプニングを過大視しないことです。

人は完璧を求めるほど、自分のミスに強く反応しがちです。

しかし、悪い出来事は一つの通過点と捉えることで余計な動揺を抑えられます。


次に重要なのが、注意を未来に向けることです。

例えば、発表で言葉に詰まったら次の一文をどう伝えるかに意識を移す、プレゼンで資料が動かなければ話で伝える工夫を即座に考える。

過ぎたトラブルではなく「次の一手」に集中することで、観客や相手の目線も未来へと向けられます。


最後に、経験を次回へ活かす姿勢も欠かせません。

本番は過ぎてしまえば全て終わりという姿勢では成長が望めません。

「次回」の予定がなくとも、長い人生の中で必ずと言ってよいほどまた同じような場面を迎える機会が来るはずです。

起こった出来事を振り返って分析し、改善策を立てることで、経験が財産へと昇華されます。


「失敗を過大視しない」「注意を未来に向ける」「経験を次に活かす」という3つの姿勢を持つことで、マイナスをプラスへと変換するチャンスを手にしましょう。

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不正のトライアングル

多くの場合、事故を引き起こすのは人間のエラーがきっかけです。

そこでミスを起こさないようなマニュアルを整備したりといった対策を講じますが、時にルールを逸脱する不正が意図して行われることもあります。

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ルールを守るべきであることはわかっていても不正を行ってしまう。

その心理の背景には機会・動機・正当化3つの要素があると考えられています。


機会は不正を行うチャンスがあること、ルールや監視が不十分で不正を行える環境があることを指します。

 

動機は不正へと突き動かす理由があること、自分がやらなければといったプレッシャーや責任感などがこれに当たります。

 

正当化は行った不正が悪ではないと言い聞かせられる論拠があるのこと、目的のための省略行為やリスク軽視などを指します。


この3つの要素がどれか一つでも欠けていれば、不正を起こそうとする心理にブレーキが掛かります。

火災で助けを求める人のもとへ一分一秒でも早く駆け付けたい――そうした気持ちから本来は赤信号を徐行で通過しなければならないところを減速せずに通過する。



本来はルールや手順に則って行動を起こすべきだとわかっていながらも、不正を行ってもバレない、大きな目的のためには許されるという考えからこれが守られない、ということが起こり得ます。

ただし、この「赤信号で徐行をする」というルールが作られた意味を考えれば、この省略行為がやがて何をもたらすのか…おわかりだと思います。

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逆に不正を防ぐための方法として、この3要素のいずれかを挫くことが有効です。