執筆者:現役消防職員(消防隊長・人事マネージャー歴任)|非常時の経験を日常に活かす防災知識を発信中
ガソリンは氷点下でも引火し、爆発的な熱量を秘めた極めて危険な物質です。その真の恐ろしさと、凄惨な事件から導き出された命を守るための避難・規制の教訓を学びましょう。
【身近な爆発物】ガソリンの真実|火災事例から学ぶ避難ルートと販売規制の重要性
【消防の現場視点で、まず結論をお伝えします】
ガソリン火災において、通常の避難の定石は通用しません。爆発的な燃焼速度の前では、一瞬の迷いが命取りになります。命を守るためには、複数の避難経路を頭に描いておくことが不可欠です。燃料としての利便性の裏にある、圧倒的な破壊力を正しく恐れてください。
前回は硫化水素の持つ特性についてお伝えしました。
raisethestandard.hatenablog.jp
今回は動力源として生活を支えるガソリンについての記事です。
ご存じのとおり、ガソリンは車の燃料として最も一般的に用いられる石油から精製される物質です。
「燃えるから危険」ということは知っていても、何がどう危ないのかを説明できるという方は意外と少ないのではないでしょうか。
1. 他の燃料とは一線を画す「引火点」の低さ
共にガソリンスタンドで扱われている軽油や灯油との一番の違いは「引火のしやすさ」です。
軽油や灯油は一般的に45℃以上の環境でなければ火が触れても引火しません。

一方でガソリンは氷点下の環境でも直火に触れた瞬間に引火(爆発)します。
給油しながらタバコを吸う方はいないと思いますが、そんなことをすれば当然ふとしたきっかけで引火炎上します。
また、ガソリンは流動する際に静電気を起こしやすい特性があるので、火気がなかったとしても出火の危険があります。
(そのような火災を防ぐために備え付けられているのが「静電気除去シート」です。)
2. 凄まじい熱エネルギーと爆発的燃焼の脅威
ガソリンはたった1ℓで2トン以上の重さがある乗用車を何十kmも走らせることができることが示すように、大変な熱量を秘めています。
つまりこれに火が付いて熱エネルギーに変換された際には、通常の火災では考えられないような爆発的な燃焼を起こします。
例えば京都アニメーション火災や大阪市心療内科クリニック放火殺人事件では、犯人が放火にガソリンを用いたことで出火初期から激しく炎上しました。
3. 「避難の定石」を覆す盲点と命を守る対策
これらの事例によって避難口の周囲で悪意を持って火を放たれた時、避難の定石が通用しなくなってしまうという盲点があらわになりました。
このような多くの犠牲者を出してしまう事件が立て続けに起こったことから、同じような事態を防ごうと対策も練られています。
まずは避難における対策として、避難口を複数確保して家具や設備で塞がないようにすること、また煙や火炎が充満した際に安全に逃げられる代替ルートを事前に整備しておくこと。
4. 強化された販売規制と正しい管理体制
そして、ガソリンの販売における規制の強化として、携行缶での購入時には本人確認や使用目的の記載を義務づける制度が導入され、販売店にも管理体制の徹底が求められるようになりました。

いずれにしても身近で生活に欠かせないものだからこそ、その危険性を正しく理解して取り扱うことが求められています。
次回は「身近な危険物③~アルコール~」
raisethestandard.hatenablog.jp
関連記事
【まとめ】
私たちの生活に不可欠なガソリンは、一歩間違えれば爆弾に等しい破壊力を持つ危険物です。氷点下でも引火し、凄まじい熱量を放つその特性を理解することは、自分と大切な人の命を守る第一歩です。凄惨な事件を教訓として生まれた販売規制や避難ルートの確保は、形式的なルールではありません。常に「もしも」を想定し、代替ルートを確認しておくといった具体的な備えこそが、ガソリンの脅威から逃れる手段です。
現場の最前線で培った「命を守る知恵」を、日常に活かせる形でお伝えしています。
自治体・企業・学校等でのボランティア講演(首都圏内)も承っております。
※各記事のカテゴリーは、PCはサイドバー、スマホは画面下部の標準メニューからご覧いただけます。
- もっと読む
コメントを書く