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命を守る命綱~火災現場にて~

執筆者:現役消防職員(消防隊長・人事マネージャー歴任)|非常時の経験を日常に活かす防災知識を発信中

 

視界ゼロ、呼吸困難、刻一刻と迫るタイムリミット。極限状態の火災現場で、消防隊員が唯一信じる一本のロープ。文字通り命を繋ぎ、迷宮化した屋内から脱出するための「命を守る命綱」の真実を語ります。

 

命を守る命綱~火災現場にて~

 

【消防の現場視点で、まず結論をお伝えします】

火災現場における消防隊の活動は、常に自分たちの退路を確保することから始まります。熱気と黒煙で方向感覚を失えば、屈強な隊員であっても生還は不可能です。その命運を握るのが、出入口から伸ばす一本のロープです。これは単なる装備ではなく、仲間と出口を結ぶ唯一の道しるべ。自身の安全を守る術を極めてこそ、救助を待つ人々の命を救うことができる——。プロの現場が自己犠牲ではなく徹底した自己防衛の上に成り立っている現実を、ぜひ知ってください。

 

タイトルの「命を守る命綱」

 

意味が重複して、日本語としてはやや不自然ですよね。

ですが、私たちの命を守る欠かせない存在を、今回はあえてこの言葉で表現していきます。

 


消防の任務は人々が逃げ出すような場所に向かって行くことです。

建物の中は熱気と煙が充満し、視界はほぼゼロ。

中では何が燃えているのか、どこが出口なのかもわからない。

 

そのため火災現場は、文字通り命懸けの現場となります。

そんな環境で活動する私たち消防隊にとって命を守る存在、それは「ロープ」です。

その重要性を順を追って説明します。

 

大府市消防本部より

 


1. 消防隊が建物の中へ入る「真の目的」とリスク

消防隊の活動といえば「燃えている建物に水をかけること」ですが、私たちが建物の中に入って活動する際の目的は主に2つです。

1つは燃えているものに直接水をかけること、もう1つは逃げ遅れた人を探して助け出すことです。

 

しかし、建物の外での活動に対して、屋内での活動は大きな危険を伴います。

炎による熱と、煙に含まれる高濃度の一酸化炭素が大きな脅威です。

 

呼吸保護具(空気ボンベ)なしでは10秒も活動することはできません。

ボンベの残量というタイムリミットが活動の制約となります。

 


2. 視界ゼロの恐怖:知らぬ間に奪われる「方向感覚」

そして、火災の状況は刻一刻と変化を続けます。

最初はうっすらとした煙が漂っていたと思ったら、いつの間にか延焼が広がって指先も見えないような黒煙が充満しているというようなこともざらにあります。

 

私たちは視覚から得た情報を頼りに建物に入っていきますが、視界が奪われた状態で初めて入る建物から脱出することは叶いません。

 


3. 命を繋ぐロープ:出入口までを物理的に結ぶ

そこでロープを活用します。

このロープは活動する隊員の装備に(意に反して外れることのないよう)カラビナで装着し、建物内を探索する際に引っ張りながら進むことで、出入口までの経路を確保する役割を持ちます。

 

三重県消防学校より

 

いざという時に互いを助けるため、隊員同士もロープを介して物理的なつながりを維持します。

煙で互いの姿が見えなくても、ロープをたどれば仲間や出口の位置を把握することができます。

 


4. 現場のリアル:広大な空間で頼れるのは「感触」のみ

私がかつて体験したある倉庫火災の現場では、大きな建物に煙が充満して視界はまったくなく、熱気と煙が肌を刺すように襲ってきました。

 

住宅であれば廊下の両壁に触れることが位置を知る目安になりますが、視界のない広大な空間で方向感覚を保つことは不可能です。

出入口から伸ばしたロープのみが、命をつなぐ道しるべとなっていることを実感しました。

 


5. 救助者の安全が住民の安全に直結する

もちろん、ロープはただ身に着けていれば安全というものではなく、適切な使い方、結び方、張り方で迅速に取り扱えるように訓練が必要です。

(視界のない中で絡まってしまうと逆に身を危険にさらすことになります。)

 


現場で活動する隊員が自分たちの安全を守ってこそ、住民の命を守ることができますので、人を助ける訓練はもとより自分の身を守るための訓練を続けています。

 

 

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執筆者
現役消防職員・hyakk

現場の最前線で培った「命を守る知恵」を、日常に活かせる形でお伝えしています。
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このサイトの運営者・執筆責任者

hyakk(30代・現役消防職員・防災士)