執筆者:現役消防職員(消防隊長・人事マネージャー歴任)|非常時の経験を日常に活かす防災知識を発信中
2021年に新宿区で発生した二酸化炭素消火設備の誤作動事故。致死濃度を大幅に超えるガスが充満した地下空間で、何が起きたのか。実際の事故事例を紐解き、目に見えない「危険な空気」の恐ろしさと、私たちが学ぶべき教訓を再確認します。
【事故事例】新宿区マンション地下駐車場・二酸化炭素消火設備事故|致死濃度24%の戦慄
【消防の現場視点で、まず結論をお伝えします】
この事故で検出された「二酸化炭素濃度24%」という数字は、吸い込んだ瞬間に意識を失う極めて危険な状態です。二酸化炭素消火設備は、油火災などに対して非常に高い消火能力を持つ反面、ひとたび誤作動すれば逃げ場のない地下空間を死の空間へと変えてしまいます。作業現場における設備の把握と、万が一の際の避難行動の徹底がいかに生死を分けるか。消防隊が救助に入った際の凄惨な状況を、私たちは決して風化させてはなりません。
「危険な空気②~CO2(二酸化炭素)~」で紹介した二酸化炭素消火設備で起こった事故事例を紐解きます。
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1. 2021年4月15日、新宿で起きた惨劇
令和3年(2021年)4月15日、東京都新宿区のマンション地下駐車場で作業員7名が、老朽化した天井ボード張り替え作業を行っていました。
16時30分頃、何らかの原因で二酸化炭素消火設備が誤って作動しました。
(放射の原因は熱又は煙の感知器のセンサーが誤作動したものと考えられています。)
2. 決死の救助活動と失われた4名の命
地下にいた作業員6名のうち1名が自力で地上に脱出し、119番通報しました。
まもなく到着した消防隊が垂直はしごで地下に入り、逃げ遅れた5名を地上に救助しました。結果、作業員6名が病院に搬送されましたが、4名が亡くなりました。
3. 濃度24%:致死濃度を遥かに超える空間
消防隊が地下の二酸化炭素濃度を測定すると、致死濃度を大幅に上回る24%が検出されました。
東京新聞より
このような事故を防ぐための「現場でのコミュニケーション」や「違和感を口にできる環境」についても、本ブログでは重要視しています。
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【まとめ】
新宿で起きたこの悲劇は、二酸化炭素消火設備の危険性を改めて世に知らしめることとなりました。消火設備としての有用性は高いものの、作業時の閉止弁の確認や、誤作動時の迅速な退避、そして何より設備への深い理解が欠かせません。「目に見えない、匂わない」ガスが、一瞬にして命を奪うという事実を重く受け止め、日頃の安全管理を徹底していきましょう。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、二度と同じ過ちを繰り返さないことが私たちの責務です。
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